長鳴鶏の宿にて(4)
「随分前から時間が空いたじゃないか。しかもなんでまた僕なんだ?」
「気にするな。時間が空いたのは他の冒険者スカウトして色々やっててのんびりしてたからかな。」
「クリスも無理やりブシドーに転職させたしな」
「ぎく」
「おまけに結局新しいファイターを主戦力にして前と同じ構成でやってるからクリスずっと待機組だもんな。ああ、だから怖くて声かけられなくて僕をまた引っ張り出したってことか」
「う、うるさいなっ……だっ、だってあんなにもろいと思わなかったんだもの……っ(よよよ」
「まぁ、比較対象がほとんどの防具がつけられる上にDEFブーストのあるパラディンとソードマンだからな」
「攻撃力は文句ないんだけどさ。でも、もろさがどうも……レベル差20あるから当然っちゃ当然かもしれないけど、彼ら前におくならアイス前に置いた方が硬いのよね」
「どうせアイスの歌でMPには困らないんだから毎ターンセシリアに回復させればいいじゃないか。どうせすること無ければ防御でMP腐らせてるんだろ?」
「まぁ、そうなんだけど……」
「そもそも現状で新しい冒険者を主力に据えよう、って考えが間違ってると思うけどね、僕は」
「うぐっ」
「みんなLV30くらいまでにはなったんだから僕たちに混ぜるんじゃなくて彼らだけで樹海に行ってもらえば良いじゃないか」
「うぐぐっ」
「後は前衛を交代させるんじゃなくて後衛を抜いて前衛3人にするか、だろうね。」
「それは抜けるのは私だから却下」
「……自覚あったんだな、一応」
「階層の真ん中まで行ければ泉があるからアイス抜いてもいい気もする…けど。でも前衛増やしてダメージソース増やしてるなら減らすべきは純ダメージソース源の私だろうね。それ以前に今の戦闘スタイルが前衛が壁になって歌の恩恵ぎりぎりまで受ける&私の毒で一掃するスタイルになってるからこそ前衛の防御力の低さが気になっちゃうんだろうな。無駄なダメージ受けてるんだもんね」
「やっぱお前が外れるか彼らでPT組ませるか、だな」
「しかし、ますます鬱蒼とした場所になるのかと思ったら深海みたいな場所でびっくりした。第3階層に降りた直後の感動はちょっと忘れられない」
「確かに印象的ではあった。異質という感じを受けたけどね、僕は」
「そう?まぁ、後はカエルにお世話になってるのと、蟻がうざかったのと、蓮の移動がめんどかった位でこれといった印象はないかなぁ。あの変な人っぽい女の子の言う守護者とやらもそんな強くなかったし。」
「そういえば第3階層のFOEとはほとんど手合わせしてないな。あの現れたり消えたりするのはなんだったんだろう?」
「わざわざ危険に突っ込む事もないか、と特に気にしてなかったけど……。まぁそのうち突っ込んでみてもいいかもね。とりあえず今はイマイチ気の乗らないあのミッションをどうにかしないと。」
「気が乗らないなら受けなければいいじゃないか」
「受けなかったら先にすすめないじゃない」
「つまり、彼らより自分の好奇心の方が優先順位が上だってことだろ?人と同じ姿をしてようが言葉が通じようが相容れない存在であるなら他の魔物と変わりはない、と割り切るんだね。それに、僕らがここで降りたところでいずれ誰かがこのミッションを完遂するさ。」
「……そーよね。あ、でもさ。」
「ん?」
「あのブシドーとカースメーカーの2人組。あの二人って結構迷宮の深い所までたどり着いてるのよね。彼女らは途中で探索をやめたのかな。」
「全てを暴くことはあの街のためにならない、って考えみたいだしな。まぁ、進んでいけばいずれ分かるさ。」
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