フロースの宿にて(1)
「……おや?我らがギルドマスター殿は?」
「『今後の自分の身の振り方について考える』と言って部屋に引きこもっていじけているようです。」
「……まぁ、探索メンバーを決定したのも自分とはいえ、本人全然迷宮に行ってない訳だしな。今度連れて行ってやろう。獣の王を倒して後にでも。」
「真面目な話、以前の自分とは異なる術式の使用を求められているので悩んでいる、というのもあるようです。」
「ああ、あいつの十八番の毒の術式が消えてるからな。」
「なので、以前と違いダメージを出すにはその度にTPを消費する必要が生じるのですが……術式のTP消費量が上がってますからね。最も、TP消費が厳しいのはアルケミストに限った話ではありませんが。」
「その上、エトリアの迷宮と違って回復の泉もないし、バードの子守唄も無い、と。」
「ドクトルマグスがTP回復と譲渡の術を心得ているようですが……有効活用するのは少々難しいでしょう。」
「彼らの剣が真価を発揮するにはまず相手を状態異常にしないといけないからね。」
「しかし、この迷宮はエトリアのより厳しい気がするね」
「そうですか?私は向こうでは分不相応な階ばかり連れて行かれてましたのでなんとも……」
「5階に鎮座する王のせいらしいけど、FOEがとにかく多いし、後、階に見合わない敵が出たりしたでしょう。先を急ぎすぎて失敗してた部分も確かにあるとは思うけど。」
「死亡者は多いし、宿代節約もできなくなったし、なかなかお金が貯まらない、とギルドマスターもぼやいていましたね」
「リザレクションが無かったら大赤字もいいところだろうね。後、素材集めも気が抜けない。素材集め担当の2人があんなところでラフレシアに遭ったもんだから、以来なかなか迷宮に足を向けてくれないらしいよ」
「そう…でしょうね…。流石にあれは。」
「さて、大体この階層も一通り回り終えたことだし……。王に挑む前に体力つけないとね」
「3日間の遊撃任務、ですか。果たして持つでしょうか」
「ま、持たせるように頑張るしかないね。それなりに長期戦は出来るようになってきたし、事故が起きなければ何とかなる、と思ってるよ。僕は。」
コメントはありません。